こんばんわ。空想科学理論研究家のDr.カバ雄です。
今宵もソリューションという名の妄想をお茶の間にお届けいたします。

長かったエクテンシーズンも終わりに近づきましたが、我輩的にどうしても語っておきたいデッキがあります。それが今回のテーマ、PTコロンバスでガブリエル・ナジフが使用した『青マルカ』です。

その美しいストラテジー、考えつくされた構成たるや、まさに珠玉の一品と呼ぶに相応しいデッキでした。PTでボッコにされて初日落ちしてしまったとは言え、戦術自体は白眉なのです。きっとそのうちBBあたりに解説載るんだろうと思ってましたら、ついぞ誰にも触れらませんでした。このまま忘却の彼方に消えてしまうのも勿体無いので、僭越ながら少々語らせて頂きます。

これがナジフのデッキです。

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      青マルカ
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 Gabriel Nassif  /  PTコロンバス127位
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クリーチャー22
 4《極楽鳥/Birds of Paradise》
 4《桜族の長老/Sakura-Tribe Elder》
 4《花の壁/Wall of Blossoms》
 3《永遠の証人/Eternal Witness》
 3《貪欲なるベイロス/Ravenous Baloth》
 1《スパイクの織り手/Spike Weaver》
 1《真面目な身代わり/Solemn Simulacrum》
 1《起源/Genesis》
 1《夜の星、黒瘴/Kokusho, the Evening Star》

スペル16
 4《陰謀団式療法/Cabal Therapy》
 1《頭蓋の摘出/Cranial Extraction》
 2《破滅的な行為/Pernicious Deed》
 1《棺の追放/Coffin Purge》
 1《生ける屍/Living Death》
 1《繰り返す悪夢/Recurring Nightmare》
 3《直観/Intuition》
 2《吸血の教示者/Vampiric Tutor》
 1《生ける願い/Living Wish》

土地22
 4《ラノワールの荒原/Llanowar Wastes》
 4《汚染された三角州/Polluted Delta》
 1《島/Island》
 4《沼/Swamp》
 9《森/Forest》

サイドボード15
 3《燻し/Smother》
 2《仕組まれた疫病/Engineered Plague》
 2《強迫/Duress》
 2《破滅的な行為/Pernicious Deed》
 1《魔力流出/Energy Flux》
 1《金粉のドレイク/Gilded Drake》
 1《スパイクの織り手/Spike Weaver》
 1《スパイクの飼育係/Spike Feeder》
 1《萎縮した卑劣漢/Withered Wretch》
 1《酸化/Oxidize》
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このデッキの大きな特徴としては《直観》のためにタッチ青、これに尽きるのではないでしょうか。エクテンに精通している方でしたら、《直観》がどのように働くかもうお解かりでしょう。そう、
 ?直観療法
 ?《証人》《起源》との組み合わせ
という2種類の必勝ルート開拓用です。

?はアルーレンが青使いを恐怖のどん底に陥れるコンボです。《直観》で《陰謀団式療法》を3枚持って来てFB込みで4発連打し、相手の手札をズタボロにします。対青系コントロール戦で、エンドにマスカンを仕掛けられるので、ゲーム展開として非常に組み立てやすくなります。
?はスタンダードでたまに見る《証人》《けちな贈り物》コンボのエクテン版です。欲しいものがデッキに1,2枚しか入ってなくても、足りない分を《証人》として持って来れば確実に手に入れられるわけです。また《直観》には、場がガッチリしたあたりでエンジンとしても働けるポテンシャルもあります。《証人》《証人》《繰り返す悪夢》とか、《起源》《療法》《療法》とか持ってこられるとたいへんウザイです。

長期的戦略としてのマルカと《直観》の整合性たるや、まさにジャストフィットといった所でしょう。2年前のシーズンで、カイ・ブッディにより《生き埋め》型の赤マルカが提唱され環境に衝撃を与えましたが、この《直観》型の青マルカもそれに匹敵すると、個人的には考えております。
マルカに《直観》をタッチする独創性の素晴らさをお解かり頂けたでしょうか? ともすればその点の目新しさに注目されがちですが、更にこのデッキの凄いところは、低マナ域生物の選択の審美眼にもあります。

PTコロンバス、5DNと神河物語の入った最初のエクテン環境です。前評判で《永遠の証人》《桜族の長老》は評価が高かったとは言え、マルカには鉄板ともいえる《極楽鳥》《花の壁》《ヤヴィマヤの古老》が居ました。これらの3マナ以下生物をどのような組み合わせで選択するか、この時期にエクテンをやっていた方なら試行錯誤のほどはご存知でしょう。

我輩なんぞは物体系デッキビルダーですので、「《証人》《古老》の3マナ域計8枚は確定だから、マナ生物8必要で《ラノワールのエルフ》4枚《極楽鳥》4枚がこれからの常識だね」などと、いま思うと赤面モノの思考をしておりました。

実際、プロたちの間でもこの時期は萌芽的研究期間であったらしく、コロンバス時点での統一的な見解は成されていません。例として、日本が誇る石田格プロ、有名なマルカ使いジェロン・レミィ(Jeroen Remie)、マルカ使い最上位(11位)のトゥイフェル・トーバンの3マナ以下生物の構成と比較してみましょう。

ナジフ
 4《極楽鳥/Birds of Paradise》
 4《桜族の長老/Sakura-Tribe Elder》
 4《花の壁/Wall of Blossoms》
 3《永遠の証人/Eternal Witness》

石田プロ
 4《極楽鳥/Birds of Paradise》
 4《桜族の長老/Sakura-Tribe Elder》
 4《永遠の証人/Eternal Witness》
 4《ヤヴィマヤの古老/Yavimaya Elder》

ジェロン・レミィ
 4《極楽鳥/Birds of Paradise》
 4《ラノワールのエルフ/Llanowar Elves》
 3《永遠の証人/Eternal Witness》
(4《ファイレクシアの抹殺者/Phyrexian Negator》)
(3《トロールの苦行者/Troll Ascetic》)

トゥイフェル・トーバン
 4《極楽鳥/Birds of Paradise》
 4《花の壁/Wall of Blossoms》
 4《永遠の証人/Eternal Witness》


見事にバラバラでしょう? その中で、ナジフの構成が如何に優れていたかを証明するために、シーズン4ヶ月経過後のマルカと比べてみます。GPシアトルで見事優勝を飾り、マルカ復活の狼煙を上げたアーニー・マルケサノのマルカです。
アーニー・マルケサノ
 4《極楽鳥/Birds of Paradise》
 3《桜族の長老/Sakura-Tribe Elder》
 1《萎縮した卑劣漢/Withered Wretch》
 4《花の壁/Wall of Blossoms》
 3《永遠の証人/Eternal Witness》
(2《トロールの苦行者/Troll Ascetic》)


如何ですか。メタ的な多少の相違はあるものの、基本構造はナジフの構成とそっくりですね。素晴らしい、実に素晴らしいです。PTコロンバスの時点で、旧来のマルカで常識とされていた《ヤヴィマヤの古老》をバッサリ切り落とした構成にまで辿り着いているとは! このようなメタ的な慧眼には感嘆せざるを得ません。

(※注:この考察はメタ初期における選択肢の多様性と選択の困難さを推し量る例として挙げたもので、特定の個人を批判する意図ではありません。つまり何が言いたいかといいますと「ぶっちゃけ、この時期なら間違っててもしゃーない、合ってるほうがすげー」ってことです。)
さて、それではこの青マルカを現在のメタに合わせてどのように改造すべきでしょうか。その指針、と言いますか叩き台を挙げてみたいと思います。我輩の考えうるシーズン最終形の青マルカは以下のようになりました。

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クリーチャー20
 4《極楽鳥/Birds of Paradise》
 4《桜族の長老/Sakura-Tribe Elder》
 4《花の壁/Wall of Blossoms》
 3《永遠の証人/Eternal Witness》
 3《貪欲なるベイロス/Ravenous Baloth》
 1《曇り鏡のメロク/Meloku the Clouded Mirror》
 1《起源/Genesis》

スペル17
 4《陰謀団式療法/Cabal Therapy》
 1《頭蓋の摘出/Cranial Extraction》
 4《破滅的な行為/Pernicious Deed》
 1《繰り返す悪夢/Recurring Nightmare》
 1《棺の追放/Coffin Purge》
 3《直観/Intuition》
 2《吸血の教示者/Vampiric Tutor》
 1《生ける願い/Living Wish》

土地23
 1《黄塵地帯/Dust Bowl》
 4《ラノワールの荒原/Llanowar Wastes》
 2《樹上の村/Treetop Village》
 4《汚染された三角州/Polluted Delta》
 1《島/Island》
 4《沼/Swamp》
 7《森/Forest》

サイドボード15
 3《綿密な分析/Deep Analysis》
 2《魂の裏切りの夜/Night of Souls’ Betrayal》
 2《強迫/Duress》
 2《帰化/Naturalize》
 1《隆盛なるエヴィンカー/Ascendant Evincar》
 1《粗野な覚醒/Rude Awakening》
 1《魔力流出/Energy Flux》
 1《金粉のドレイク/Gilded Drake》
 1《スラルの外科医/Thrull Surgeon》
 1《萎縮した卑劣漢/Withered Wretch》
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☆曇り鏡のメロク
我輩がナジフのデッキを最初に見たときの感想は、「なんで《メロク》使ってないんだろう」でした。コーネリッセンやカルステンのアルーレンに《メロク》が採用されていたので印象に残っていたというのもありますが。それ程に、マルカというコンセプトと《メロク》はピッタリきます。スタンの青緑コンを見ている皆様にはこの辺の感覚が容易にご理解頂けるでしょう。さらに気兼ねなくトークンを作れるので《陰謀団式療法》や《繰り返す悪夢》のエサを、痛みを感じることなく供給できます。10月のエクテンのセット入れ替えにより《直観》が落ちても、《メロク》のために青タッチしたマルカはあり得ると思ってます。

☆卑劣漢or棺の追放
GPシアトル優勝のマルケサノのデッキには《卑劣漢》が採用されてましたが、果たしてどちらが優秀なのでしょうか? 個人的に、このデッキなら《棺の追放》だと思います。理由は2つあります。セファリッドLife相手に後手取られて、相手3ターン目のコンボにも対抗できる軽さってのが一つ、そして《直観》でついでにサーチしておけるFB付きってのが一つです。しかし、中盤以降の安定性の面で《卑劣漢》が魅力的なのも事実です。ですので一応、メインの《生ける願い》を生かして、サイドには《卑劣漢》も用意しました。

☆黄塵地帯/粗野な覚醒
マルケサノのデッキを真似しました。特に《粗野な覚醒》は対マルカ同キャラ戦で決め手となる1枚です。

☆綿密な分析
これも長期戦略向けのカードです。単品で使ってもその手札回復力は素晴らしいのですが、何と言っても真骨頂は《直観》とのコンボです。手札が一気に8枚も貯金できるのですから、一発決まればゲームの趨勢にも影響します。

☆魂の裏切りの夜/隆盛なるエヴィンカー
対ゴブリン用としてももちろんですが、対コンボ用に用意しました。セファリッドLifeはほぼこれで壊滅します。《エヴィンカー》はアルーレンには効かないですが、そこら辺は《頭蓋の摘出》で何とかして下さい。
あと、自分の生物が壊滅するのもちょっとアレですが、そこら辺も《破滅的な行為》なり《療法》FBなりで何とかして下さい。あれに似てます、アレ。Big Redで「《弧炎撒き》と《減衰のマトリックス》がアンチコンボだけど、いざとなったら《爆片波》でサクるからいーや」みたいです。

☆スラルの外科医
対コンボ用というよりは、対同キャラ/対青系のための採用です。《直観》で《外科医》《起源》《療法》ともって来てウザがられて下さい。

如何でしょう? 埋もれてしまった珠玉である青マルカをご堪能頂けたところで、本日の空想科学理論講座を終了させて頂きます。それでは、また会う日まで。

参考資料:
PTコロンバス全デッキリスト
苗字A〜F
http://www.wizards.com/default.asp?x=mtgevent/ptcol05/decksaf
苗字G〜M
http://www.wizards.com/default.asp?x=mtgevent/ptcol05/decksgm
苗字N〜Z
http://www.wizards.com/default.asp?x=mtgevent/ptcol05/decksnz
GPシアトルTop8デッキリスト
http://www.wizards.com/default.asp?x=mtgevent/gpseat05/welcome#2
白ウィニーとマルカについて
http://members.at.infoseek.co.jp/braingeyser/02/1215.html

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